実運送体制管理簿の様式・記入例|Excel列設計とテンプレート
「実運送体制管理簿を作れと言われたが、決まった様式が見つからない」 「Excelで始めるなら、どの列を用意すればよいのか」 「2次請けまで入ったとき、請負階層をどう書くのか」
こうした疑問に答えるため、この記事では実運送体制管理簿の様式と記入例を、元請運送事業者の実務目線で整理します。制度の全体像は先に 実運送体制管理簿ガイド を確認してください。
先に結論です。
| 論点 | 実務上の答え |
|---|---|
| 様式 | 法定の統一様式はありません。Excel、紙、システム出力、いずれも可能です。 |
| 対象 | 真荷主から引き受けた1運送依頼あたり1.5トン以上の貨物について、他の貨物自動車運送事業者の運送を利用した場合が基本です。 |
| 必須記載事項 | 実運送事業者の商号又は名称、貨物の内容、運送区間、請負階層です。 |
| 保存 | 運送完了日から1年間、営業所に備え置く必要があります。 |
| Excel運用 | 最低限の列だけで始められますが、委託先の差し替えや再委託が多い会社では更新漏れ対策が必要です。 |
様式は自由。決まっているのは「何を書くか」です
実運送体制管理簿について、国土交通省の資料では「既存の配車表を活用するなど、事業者の取り組みやすい形で作成可能。電磁的記録での作成も可」とされています1。つまり、国が配布する単一のExcel様式に合わせる制度ではありません。
ただし、自由なのは見た目や管理方法であって、記録すべき事項は決まっています。貨物自動車運送事業法第二十四条の五では、真荷主から引き受けた対象貨物の運送について他の貨物自動車運送事業者の運送を利用したとき、次の事項を記載した実運送体制管理簿を作成し、運送完了日から1年間営業所に備え置くことが定められています2。
- 実運送を行う貨物自動車運送事業者の商号又は名称
- その実運送事業者が実運送を行う貨物の内容及び区間
- その実運送事業者の請負階層
- その他、国土交通省令で定める事項
国土交通省資料では、作成対象は「1荷主の1運送依頼あたりの重量が1.5トン以上」の貨物と説明されています1。この重量は、実際に実運送する時点ではなく、真荷主から運送を引き受ける時点の重量で判断します。
原則は「真荷主から引き受けた貨物の運送ごと」の作成です。ただし、これはExcelの1シートを必ず1運送だけに分けるという意味ではなく、管理番号や真荷主名、運送日などで運送単位を特定できれば、1シートに複数運送を並べても実務上は扱えます。
また、条文には国土交通省令で定める場合は運送ごとに作成することを要しない旨のただし書きがあり、国土交通省資料では下請構造が固定化している場合が示されています12。Excelで始める場合は、まず原則どおり運送単位を追える形にしつつ、自社の定期便や固定委託が例外に当たるかを確認してください。
Excelテンプレートの列設計
最小構成で始めるなら、次の列を用意します。Excelに貼り付けて、1行を「1つの実運送区間」として管理する想定です。
| 列名 | 必須/任意 | 入力例 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 管理番号 | 任意 | 202607-001 | 自社内で案件を追うための番号 |
| 運送日 | 任意 | 2026-07-10 | 積込日または運送日 |
| 真荷主名 | 任意 | さくら食品株式会社 | どの荷主から受けた運送かを追う |
| 貨物の内容 | 必須 | 冷凍食品 | 法定記載事項 |
| 運送区間 | 必須 | 東京DC〜横浜センター | 法定記載事項 |
| 元請事業者 | 任意 | 自社 | 自社が元請であることを明確にする |
| 1次委託先 | 任意 | 青葉物流株式会社 | 委託の流れを確認しやすくする |
| 実運送事業者の商号又は名称 | 必須 | 港南トランスポート株式会社 | 法定記載事項 |
| 請負階層 | 必須 | 2次請け | 法定記載事項 |
| 車番 | 任意 | 品川100あ12-34 | 実務上の照合用 |
| ドライバー名 | 任意 | 山田太郎 | 実務上の照合用 |
| 運送完了日 | 任意 | 2026-07-10 | 1年保存の起算点を明確にする |
| 備考 | 任意 | 当日差し替え | 変更理由や補足 |
「任意」としている列は法定の必須事項そのものではありませんが、後から監査・荷主対応・社内確認を行うときに役立ちます。列を増やしすぎると現場が入力できないため、必須事項と照合に必要な最小限の列に絞り、更新が続く形にすることを優先してください。
記入例:2次請けまで発生したケース
次は、1つの運送依頼のうち一部区間で2次請けが発生した例です。会社名・荷主名はすべて架空です。
| 管理番号 | 運送日 | 真荷主名 | 貨物の内容 | 運送区間 | 1次委託先 | 実運送事業者の商号又は名称 | 請負階層 | 運送完了日 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 202607-001 | 2026-07-10 | さくら食品株式会社 | 冷凍食品 | 東京DC〜横浜センター | 青葉物流株式会社 | 青葉物流株式会社 | 1次請け | 2026-07-10 | 1次委託先が自社便で実運送 |
| 202607-001 | 2026-07-10 | さくら食品株式会社 | 冷凍食品 | 横浜センター〜川崎店舗 | 青葉物流株式会社 | 港南トランスポート株式会社 | 2次請け | 2026-07-10 | 青葉物流から再委託 |
| 202607-002 | 2026-07-11 | みどり精機株式会社 | 工作機械部品 | 大宮倉庫〜宇都宮工場 | 北関東ロジ株式会社 | 北関東ロジ株式会社 | 1次請け | 2026-07-11 | 全区間を1次委託先が実運送 |
この表で大事なのは、1行目と2行目の違いです。どちらも同じ真荷主の同じ運送依頼に紐づいていますが、運送区間と実運送事業者が異なります。2行目では、元請から見た1次委託先は青葉物流株式会社ですが、実際に走ったのは港南トランスポート株式会社です。この場合、実運送事業者は港南トランスポート株式会社、請負階層は2次請けと記録します。
管理簿は「誰に発注したか」ではなく、「誰が実際に運んだか」を追う帳簿です。区間ごとに実運送事業者が変わるなら、行を分けます。
運用ルール例:誰が、いつ、どう直すか
Excel様式を作っても、運用ルールがなければすぐに実態とずれます。最低限、次の4点は決めておきます。
1. 誰が、いつ入力するか。
配車・委託を確定した担当者が一次入力し、運送完了後に事務担当が保存状態を確認する形が現実的です。運送完了後に月次でまとめて入力する運用は、差し替えや再委託が起きた案件ほど漏れやすくなります。
2. 差し替え時の直し方。
当日変更があった場合、元の行を消して上書きするだけでは、なぜ変わったのかが追えません。備考欄に理由を残し、必要に応じて行を追加します。変更履歴をExcelだけで厳密に残すのが難しい場合は、元データとなる配車表や委託依頼書と一緒に保存してください。
3. どこに保存するか。
実運送体制管理簿は運送完了日から1年間、営業所に備え置く必要があります。担当者の個人PCだけに置くのではなく、会社としてアクセスできる共有フォルダやシステム上で、月別・荷主別など検索できる形にします。
Excel運用が破綻しやすいパターン
Excelでの開始は現実的ですが、次の状態になっている会社では、早めに運用を見直した方がよいです。
- 協力会社への委託が日常的にあり、当日差し替えも多い
- 1つの案件で複数区間・複数会社が関わる
- 2次請け以降の情報が、電話やLINEの会話だけで終わっている
- 配車表、委託先台帳、請求データ、管理簿が別々のExcelになっている
- 月末に事務担当が記憶と請求書からまとめて転記している
この状態で一番危ないのは、管理簿が「実態の記録」ではなく「あとから作った帳票」になることです。差し替えや再委託が配車表や請求には残っているのに、管理簿だけ古いままになると、帳票としての信用が落ちます。
管理簿に必要な情報は、本来、日々の受注・配車・委託・運行実績の中にあります。T4 OS では、案件ごとの委託関係と実運送の記録を業務データとして積み上げ、そのデータから管理簿ドラフトを作る考え方を取っています。管理簿だけを別に作るのではなく、配車の事実から自然に出る状態にする方が、義務対応の工数を抑えられます。
実務チェックリスト
Excelで実運送体制管理簿を始める前に、次を確認してください。
- 対象になる運送が、真荷主から引き受けた1運送依頼あたり1.5トン以上の貨物か確認している
- 他の貨物自動車運送事業者の運送を利用した案件を抽出できる
- 1シートに複数運送を並べる場合でも、運送単位を管理番号などで特定できる
- 下請構造が固定化している定期便など、運送ごと作成の例外に当たる可能性を確認している
- 実運送事業者の商号又は名称、貨物の内容、運送区間、請負階層の列がある
- 運送完了日を記録し、1年間保存できる
- 2次請け以降が発生した場合に、実運送事業者情報が元請まで戻る連絡ルートがある
- 差し替え・再委託があったときの修正ルールが決まっている
- 個人PCではなく、営業所として確認できる場所に保存している
- 月次の転記作業だけに依存せず、配車・委託の時点で情報を残している
まとめ
実運送体制管理簿に法定の統一様式はありません。必要なのは、対象となる運送について、実運送事業者の商号又は名称、貨物の内容、運送区間、請負階層を、後から確認できる形で残すことです。
Excelで始めるなら、必須事項と照合に必要な項目に絞る。2次請けや区間分割が起きたら、実際に運んだ会社と区間が分かるように行を分ける。差し替え時の修正ルールと保存場所を決める。
これだけでも、最初の管理簿運用は始められます。ただし、委託関係が日々動く会社では、Excelを「完成形」と考えない方が安全です。配車・委託・運行の事実から管理簿が自然にできる状態を作ることが、義務対応を最小工数にする近道です。
Footnotes
-
国土交通省「実運送体制管理簿の作成・情報通知の義務化」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001865381.pdf ↩ ↩2 ↩3
-
貨物自動車運送事業法 第二十四条の五(e-Gov 法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/401AC0000000083 ↩ ↩2
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